■ 水の祭典太鼓響演会
★地鳴りのようなウェーブで打ち手の鼓魂(こだま)が響きあう 水の祭典太鼓響演会!
今年の出演チームは過去最大の19チームでした。
※第36回水の祭典本祭の風景…★こちらをご覧下さい。
水の祭典久留米まつりの朝は「儀式」で始まる
─おとうさん それ教えて─
黒装束の父は 仁王立ちのままバチ捌きの稽古中
暦の上で大暑を過ぎると 父の顔は日増しに天を向く
母が赤い帯紐を父の腰に回し 腹上で結んだ
節くれだった父の手が 背の紐にバチを挿すと 私は正座した
ポニーテールの頭に捻りはちまき
父の結び方は 額に食い込むようにきつい
きりりと祭りの時を迎えた
明治通りの両脇には ビルの林立
祭りを歓迎する紙吹雪が 屋上から舞い落ちた
パレードの喧噪が街を飲み込み
ブラスのリズムに足音が寄り添う
沿道を陣取ったは 色とりどりの帽子に日傘
通りを練り歩く顔々 出し物にやんやの拍手を送る
肌に焼き付く陽光をはっぴ姿で受けて立ち
子ども神輿を走らせる
唇にはほんのり 母の赤い口紅
出番を終えてその膝に座ると 陽気な久留米弁が人混みに溢れた
─ほら お父さんたい─
太鼓の一団 怒涛の勢い
─我らの舞台 ここにあり─
男の手が宙を舞い バチを空にかざす
叩け、叩け、叩き込め
観る者は無言で男の肩を押す
その身体は 街の鼓動となり しばし跳舞する
夢を掻き抱いた瞬時 太鼓は打ち果てた
─来年はおまえもやるか─
父の大きな手は火照り くっきりと赤い痣
指を絡ませて バチを受け取る
父の顔に母のハンカチ
─夜は母さんのそろばん踊りたい─
父の笑顔に母が紅潮した頬を緩ませる
明治通りに一陣の風
街を早足で駆け抜け 立秋が顔を覗かせた
〜水の祭典久留米まつり25周年記念誌「燃える夏:祭り幻視」〜
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